オリーブオイルができるまで <搾油所にて~前半~>
こんにちは。片幸子です。
前回から引き続き、オリーブオイルができるまでのお話です。前回はオリーブの実の収穫についてでした。今回は、収穫の後のオリーブの実を搾油所に運搬して、そこでオリーブオイルに変わっていく様子についてです。
オリーブの実からオリーブオイルになるまで、いくつか工程がありますので、まずはその前半をお伝えしたいと思います。今回と次回でご紹介する内容は、オリーブオイルを購入するとき、製法について書かれている場合の言葉の意味にもつながりますので、参考にされてみてください。
<収穫後は搾油所へ>
収穫されたオリーブの実は、なるべく早くしぼることが重要、と前回お伝えしました。
収穫してカセットに入れられたオリーブの実は、なるべく時間が経たないうちに、搾油をする専門の場所(搾油所)に運ばれます。
搾油所は、大きな農園などであれば、固有の搾油所を持っている場合もありますが、私がお手伝いしたイタリアのオリーブ農園の場合は、地域にある農園が共同で使う搾油所を利用していました。イタリアでは、昔ながらの小規模な農園が集まる地域などでは、それが一般的なようです。
搾油をする方法は、昔ながらの方法で行われる場合もあれば、近代的な設備の場合もあり、いろいろのようです。昔ながらの方法では、大きな円盤上の石が、タテに回転してオリーブの実を粉砕する仕組みのものを目にしました。回転する石はかなり大きく、直径が2m近くあった印象です。石臼によって粉砕する方法と言われます。
ですが私が見た搾油所内では、地域の方々はこちらは利用せずに、より近代的な、機械の設備による方法で搾油を行っていました。
それはなぜか。時間の効率化、ということもあると思いますが、ほかにも大きな理由がありますので、それには後ほどふれたいと思います。
ちなみに、「家庭で栽培しているオリーブの実をしぼったら、オリーブオイルがとれますか?」という質問をいただいたことがあります。
残念ながら、オリーブの実をしぼっただけでは、オリーブオイルにはならないのです。
それはこのあと、オイルになるために必要な工程について説明をしてゆきますので、その理由についても注目してみてください。
<実を洗浄~粉砕・練り込み>
搾油所での工程の最初の段階です。
運ばれたオリーブの実は、機械の入り口となるところにまとめて入れられます。このときはまだ、余計な枝や葉が入った状態。上に伸びている階段状のところは、ベルトコンベアーのようになっていて、そこを上って機械の次の工程に運ばれますが、その間に、枝や葉は取り除かれてゆきます。
そのあと、オリーブの実を水で洗浄して、表面の汚れが取り除かれたら、次は実の「粉砕」。
オリーブの実をペースト状に砕く工程です。
オリーブの実の中には種があります。多くは種ごと粉砕されますが、ときに、種を除いて作られる方法(イタリア語ではデノッチョラートと言われる)もあります。えぐみの少ない品質を求める場合に採用されているようです。
ペースト状になったオリーブ、次は、「練り込み」という作業が行われます。
写真がちょっとわかりにくいのですが、金属の輪になっている部分がぐるぐると回転して、ペースト状になったオリーブが練られているのです。
オリーブの実をしぼっただけではオイルにならない、と言った最大の理由はここにあります。この練り込みの作業をすることで、実の中にあるオイルの分子が大きくなって油として抽出できるようになり、また、香りの成分が生まれるのだそうです。
<工程で品質に影響すること>
先に、伝統的な方法と、近代的な方法、ということに触れました。
その違いで重要なことは、温度と空気に対する対策です。
高い温度と空気、オリーブの実からオイルをしぼる工程で、これらは品質に大きく影響します。どちらもオイルを酸化させるリスクになりますので、それをいかに避けるかがポイントになります。
伝統的な方法もいくつかありますが、前述した、大きな石(石臼)が回転して粉砕する方法では、オリーブの実は空気にさらされた状態で粉砕・練り込みがされ、温度の管理はされていません。
一方、近代的な機械による方法では、外気を遮断した機械の中で、温度設定をし、一定の時間で練り込みが行われています。
※練り込みは「27℃以下で15~30分」が、香りの成分が出てきやすく、品質が保たれやすい好条件とされています。
石臼などによる昔ながらの伝統的な製法が、必ずしも品質が劣るということではありませんが、そういう違いがあるこということも、知っていていただければと思います。
次回は、オイルの抽出~出来上がりまでです。