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【美食探訪】天ぷら割烹なかじん(京都・高倉六角)

元は全国に名を知られた「虚無蕎望なかじん」という蕎麦の名店。店主が蕎麦アレルギーになってしまったため業態変更を重ね、落ち着いたのは天ぷら割烹というスタイル。当初からメニューにオリーブオイルをとりいれるなど創意工夫に満ちた京都の和食店をご紹介します。

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天ぷら割烹として復活した幻の蕎麦屋

通りが碁盤の目になっている京都の中心街は、東西南北の通り名を掛け合わせ、北を「上ル」、南を「下ル」として位置を特定する。高倉通りと六角通りの西北角にある「天ぷら割烹なかじん」は、元は全国の蕎麦通を唸らせた「虚無蕎望なかじん」という蕎麦屋だった。

打ち立てが良いとされてきた常識を覆し、石臼挽きの手打ち蕎麦を少し寝かせることでナッティな香りを引き出す。これを旨いつまみと共に塩で食べさせて名を馳せたなかじんは、大将の中村一臣さんの蕎麦アレルギー発症により店を畳むことになってしまった。場所を変え紆余曲折を経て、得意の天ぷらを主に、新たな麺を生み出して名物とし営業している。

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蕎麦アレルギーの元蕎麦職人、執念の麺づくり

「蕎麦粉は使えへん。でも蕎麦のような味わいのある麺を作ることはできひんやろか。僕みたいな蕎麦アレルギーの人でも楽しめるような麺をどうしても作りたい!」
まさに執念。自らもそう語る「蕎麦」への思いから試行錯誤して生まれたのが「麦切り」という麺。石臼碾きの小麦全粒粉に国産小麦の中力粉、デュラムセモリナ粉などを配合した麦切りは、麺の細さやのど越しなどまるで蕎麦のようだが、小麦の香り、こしの強さは確かにうどんそのもの。コース料理の中盤で供される。
まずそのまま味わい、次に塩、そして好みで自家製つゆでいただく。希望すればオリーブオイルを添えてもらえる。これがまた合うのだから面白い。「塩+オリーブオイル」はなかじんでは、10年以上前から出していた前菜の「イタリアン豆腐」でも使われる定番の組み合わせだ。

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風情あるカウンターで味わう「なかじん料理」

他に似たような店は、思い当たらない。創作性豊かな一品料理は、昼なら前菜の盛り合わせで味わえる。加えて麦切り、得意の天ぷらでは旬の野菜や魚介などのほか生麩など京都らしい素材も登場。凝り性で職人気質の中村さんは、天ぷらにつける「うに塩」まで手作りする。さらには食後の甘味も、それだけ食べに来たくなるほどレベルが高い。アイス最中のバランスに唸り、あんみつの餡に、寒天に感動する。

ワイン、日本酒に造詣が深くワイン会を時折開催。店の内装も手掛け、麦切りの通販も始めたという器用さとパワフルさにいつも驚かされる。和食の店ながらほかのジャンルの要素を柔軟に取り入れた料理が多く、思わぬところにオリーブオイルが使われていたりする。HPの季節のスペシャリテのラインナップを見るとのどが鳴る。欲張りに、色々楽しみながらゆっくり飲みたくなる店である。

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編集後記~シェフのオリーブオイルライフ!

塩で蕎麦を食べさせた最初の店と言われるなかじん。また豆腐をオリーブオイルで食べるという、今では珍しくなくなったそんな料理も、当時としては衝撃的なメニューでした。昔からファンで、中村さんの成功と挫折、戦いの一部始終をみてきた私は、幻の蕎麦を懐かしく思い起こしながらも麦切りのおいしさにほっとさせられています。お手頃な昼もいいのですが、真骨頂はやはり夜。本格割烹や和食店とは一味違う料理が楽しめます。

「(麦切りに添えられたオリーブオイルについて)うち、ええオリーブオイルつこてるでしょ? そうそうそのレシピ、木の芽がようけあったらそれで同じように作ったら佃煮できるしやってみて」

今回教えていただいたレシピは、なんと初夏に出されるスペシャリテの一品。このレシピを応用して、わが家にたくさんあった木の芽と和牛でも最高に美味しい佃煮が作れました! 他にイタリアンでおなじみのジェノベーゼのアレンジレシピもご紹介しますので、ぜひ作ってみてくださいね。

 

【天ぷら割烹なかじん(京都・高倉六角)】
住所 ▶ 京都府京都市中京区高倉通六角上ル滕屋町175 
電話 ▶ 075-257-2288
営業時間 ▶ 12:00〜14:30(14:00L.O.)、18:00〜21:30(19:00L.O.)
定休日  ▶ 水曜日
料理 ▶ 昼2990円~(税込)、夜7000円~(税別)
HP  ▶ http://www.nakajin.net/

 

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