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【美食探訪】ちゃこーる(東京・浅草)

今ではよくみかけるようになったワインを楽しめる焼鳥屋・・・その先駆けとなった店がかつて浅草にあった「萬鳥」です。地元で愛されていたフレンチが開いたこの店は、安くて美味しいワインを揃えて人気を博し、東京駅前の新丸ビルに支店を出すまでに。ここで開店からずっと焼き場を任されていたのが高橋久子シェフ。ワイン担当の三保さんと共に独立を果たした店が「ちゃこーる」です。

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大学で写真を学び、一度はその方面で仕事にもついた高橋シェフ、通称「ちゃこ」さん。ひょんなことから料理の世界に入り、その腕を認められて「今までになかった新しい焼鳥店」の焼き手を任されることに。長年繁盛店だったが、要となるスタッフふたりの独立のため店は新丸ビルに本拠地を移し、ちゃこさんは生まれ育った浅草で3年前に「ちゃこーる」を開店した。町工場だった実家を改装したこぎれいな店舗は、最近ポツポツと新しい飲食店ができている観音裏にある。

「両親と一緒に住んでますけど、料理は作りませんね。父は私の作る料理は食べてくれないんですよ。母さんのほうがずっと料理上手だなんて言って」

そう謙遜するちゃこさん。住み込みの従業員がいたこともあり、大勢の食事をてきぱきと美味しく作る母の姿を見て育った。大学時代も、ゼミの仲間たちと幾度となく料理を作りあって楽しんだという。たくさんの料理を手際よく作るということに慣れ親しんできたから、飲食店で料理を作るという新しい仕事にも違和感なくなじんでいけたのだろう。

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ワイン&焼鳥のさきがけ「萬鳥」から独立

出身店である萬鳥のメニューも取り入れつつ、ちゃこさん独自のセンスを加味した料理が、三保さんの選ぶワインにとても合う。単にワインと焼鳥、というだけではない。野菜を使った一品料理や串焼きも、肉類に負けない存在感がある。鶏は色々焼き比べてみて選んだという天城シャモ。豊かな自然の中でブロイラーの何倍もの時間をかけて平飼いされた健康な鶏は、伊豆の高級旅館でも名物料理に使われる一級品だ。

そして何より、他の焼鳥屋ではなかなか食べられない、ほろほろ鳥、うずら、そして季節になればジビエなどを炭火でじっくり焼いたメニューが素晴らしい。これらに合わせる薬味も抜群にいい。バルバリー鴨の焼鳥は、柔らかな辛みを持つカンボジア産の生こしょうが肉の旨みを引き立て、何度食べても唸らされる一品。家庭での料理にヒントをもらうこともしばしばで、ちゃこさんと話したくてつい焼き場の前に陣取ってしまう。

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安旨ワインと和洋ミックス、ちゃこーる風焼鳥

ちゃこーるという店名は、焼きものに使う「炭(charcoal)」と店主ちゃこさんの名前をかけたもの。口コミサイトにはほとんど情報がないため、予約がとてもとりやすい。どの駅からも徒歩十数分はあるという不便さをおいてもわざわざ通いたくなる、まさに穴場店。こういう店ではどうしても肉中心になりがちだが、つまみになる野菜メニューのおかげで、バランスのとれた食事ができるのもありがたい。

本当はナイショにしておきたいけれど、やっぱりこんないいお店、たくさんの方に知っていただかなくてはもったいない!と思う。職人気質のちゃこさんは、寡黙でボーイッシュに見えるが、一品の量や塩加減など、料理には女性らしい繊細さがのぞく。ひょうひょうとした雰囲気でソフトにサービスをこなす三保さんと、いいコンビだ。

言問通りから千束通り商店街へ。西浅草3丁目を越え、マツキヨの角を曲がって直進すると、道の角に出した立て看板が見えてくる。365日混雑している浅草周辺も、一本大通りを裏へ行けば、そこには昭和の雰囲気漂う静かな下町が広がっている。浅草観光のおりに、軽くつまんでワインバー代わりにという使い方もおすすめの、価値ある一軒へぜひ。

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編集後記~シェフのオリーブオイルライフ!

以前から、いろんなメニューにオリーブオイルが使われていることが気になっており、聞くとオイルの使い方にもちゃこさんならではのセオリーがありました。

「野菜を焼くときは必ずはけでオイルを塗ります。つやが出て美味しそうに見えるのはもちろん、熱で表面が乾燥してしまうのも防げます。和の野菜には太白ごま油、洋の野菜にはピュアオリーブオイル。どちらもあえて香りがあまりたたないタイプを使います」

網焼きやバーベキュー、オーブン料理などで応用できそう!確かに切った野菜をそのまま焼くと表面はパサパサになってしまうし、適当にオイルをかけるとムラができて焦げてしまうことも。はけで塗るひと手間がプロのコツね、なるほど!と膝を打ったのでした。サラダや串焼きの仕上げに使うのはもちろん、エキストラヴァージンオリーブオイルですよ、とちゃこさん。見えないところにも、栄養や風味に優れたオリーブオイルを使う丁寧な調理に、ますますファンになった私でした。

 

【ちゃこーる(東京・浅草)】
住所 ▶ 東京都台東区浅草4-14-6
電話 ▶ 03-3874-0075
営業時間 ▶ 18:00~24:00(L.O.23:00)
定休日  ▶ 水
HP  ▶ https://www.facebook.com/%E3%81%A1%E3%82%83%E3%81%93%E3%83%BC%E3%82%8B-493364334117999/

 

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