Knowledge

オリーブオイルができるまで<搾油所にて~後半~>

こんにちは。片幸子です。
今回は搾油所での搾油の様子、後半です。いよいよ、オリーブオイルに仕上がります。
前回は、ペースト状になったオリーブを練り込んで、香りと油分を出やすくする、という工程まででした。その続きで、搾りたてのオイルが出来上がるまで、さらに、私たちの食卓に届くまでを、簡単にご紹介したいと思います。

entry_photo

<練ったペーストから油分を取り出す>

前回の最後にご紹介した工程は、粉砕されたペースト状のオリーブを練り込むところでした。そのペーストには、オイル分の他にも、砕かれた実のかすや水分などが含まれているので、それを取り除く必要があります。

現在主流になっているのは、『遠心分離法』と呼ばれる方法です。ペーストを遠心分離機にかけて、比重の違う「油分」、「水分」、「実のかす」を分ける方法で、空気に触れにくく衛生的、とされています。
昔ながらの伝統的な方法では、『圧搾法』と呼ばれる方法があります。「フィスコリ」とよばれる円盤状のマットにペーストをのせてから、それを何重にも重ねて、上から圧をかけて抽出する方法です。この方法では、ペーストや抽出されたオイルが空気に触れやすいので、品質管理が難しいという面があるようです。
これらは、オイルを作る生産者の考え方によって、選択されています。

そのようにして分離された「油分」から、丁寧な場合はまたさらに、わずかな水分も取り除きます。
さらにまた別の遠心分離機にかける方法や、最新の方法のひとつとして、ステンレスの板を差し込んで、ついてくる油分を集めるという方法(シノレア法またはパーコレーション法と呼ばれる)などがあります。



<いよいよオリーブオイルに>

余分なものが取り除かれた状態で、いよいよオリーブオイルとなって登場です。
私は、管から出てきたばかりのオイルに出会ったとき、その色と香りに、この上ない感動を覚えました。オリーブオイルとして見たことのない、白濁したエメラルドグリーン。実に美しい色をしていて、とてもフレッシュな豊潤な香りが広がっていました。

entry_photo

お手伝いをした農園では、そのオイルをステンレスタンクに小分けして搾油所から持ち帰り、農園に着くと、早速みんなで味見。

entry_photo

グリルで焦げ目をしっかりつけたトスカーナの塩なしパンに、たっぷり浸るくらいに搾りたてのオイルをかけて。
「Buonissimo!!!」(すっごくおいしい!!!)と、誰もが今年の収穫を喜び安心した瞬間でした。

この段階のオイルは、白濁していて、遠心分離などでも取り除けない、「澱(おり)」が残った状態です。それを沈殿させたり、フィルターなどを通して取り除かれたりすると、よく目にする透明なオイルの状態になります。



<無濾過・ノンフィルター、とは?>

その「澱(おり)」についてですが、知っておいていただきたいことがあります。
日本で販売されているオイルでも目にすることのある、「無濾過」または「ノンフィルター」と書かれているオイルは、「澱(おり)」が残った状態で瓶詰されたものです。
その「澱(おり)」は、ごく搾りたてのものであれば、特有の風味や味わいになりますが、時間が経過すると、酸化のリスクを高めることにつながってしまうのです。

搾油の短い時期に出回る、季節限定搾りたての無濾過のオイル、ということであれば、すぐに使うことを前提に、その味わいを楽しめる可能性はありますが、搾ってから時間が経つごとに、そのリスクを考える必要があります。
ですから、「無濾過(ノンフィルター)」の表示があったら、なるべく早く使うことが大事、と知っておいていただきたいと思います。
決して、「無濾過(ノンフィルター)」であれば高品質(どんな状態であっても)、ということでは無いので、ご注意くださいね。

通常は、搾りたてのオイルをフィルターに通したり、ステンレスタンクに入れて、澱を沈殿させるなどしてから、透明になったオイルを瓶に詰めます。
透明な状態になっても、すぐに瓶に詰められないオイルは、まとめてタンクに保管されていますが、こまやかに品質管理に気を遣う場合は、タンクの上部に窒素を入れて、空気に触れさせずに保管する、ということもあるようです。写真は、大きな工場で、ステンレスタンクに保存されている状態です。

entry_photo

 

数回に分けてご紹介した、オリーブオイルができるまでについて、いかがでしたでしょうか?オリーブオイルはオリーブの実からできるジュース、というような表現もありますが、実は、出来上がるまでには大事な工程や、作り手のこだわりがいろいろある、ということがおわかりいただけたのではないかと思います。オリーブオイルを購入するとき、こだわりの製法○○○などと書かれていたら、ちょっと思い出してみてくださいね。

 

関連キーワード

関連キーワード

関連記事

ランキング