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【美食探訪】祇園MAVO(京都・祇園)

小田原からやってきて、京都フレンチに新風を吹き込んだその店は、祇園の石畳を前にたたずむ宿の一角にあります。朝は宿の客が利用しやすいレストランとして和朝食を、そして昼夜は完全予約制のモダンフレンチを提供。料理に合わせるドリンクは、ワインのみならずここだけの「ティーペアリング」が評判です。いったいどんなシェフが、どんなお料理を作っているのでしょう?

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八坂神社の正門である南楼門から続く下河原通りは、東山界隈のメインストリート。風情ある石畳の石塀小路や高台寺、清水寺など有名寺社に通じる道で、あたりには料亭や宿、民家も多く、祇園のど真ん中とは違うゆったりした空気が流れている。この通りに面して建つ宿「舞風館」の一角に、独立したエントランスを持つフレンチ「祇園MAVO」がある。

小田原で人気を博していたお店が、なぜ京都に?と当初は私も思った。けれどシェフの西村勉さんは大阪の調理学校出身であり、マダムの裕美さんとの出会いも関西。そして、裕美さんのご実家が京都であったことから「いつか必ず京都でお店を」と約束され、その約束を果たす形で2年前にこの店を開かれたことを知り感動したのだった。素敵なおふたりはいつも一緒にいる。

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京都だからこその料理とティーペアリング

西村さんは「守口プリンスホテル」「小田原ヒルトン」と東西のホテルで要職につき、奥様であるマダムと出会った、京都のカフェレストランでの経験も糧として個人店開業への礎を築いた。ガストロノミックで前衛的な料理は、ここにきてさらに「京都」を意識したものに進化している。それは食材に限らず、和の概念だったり、京都の風景を模してみたりと変化に富んでいる。

「mavo tea pairing "彩 aya"」は日本茶、そしてさまざまな種類の茶をベースにしたカクテルを皿ごとに出すもので、風味だけでなく色あいも考えワイングラスで供される。フレンチやイタリアンを楽しむのにワインは欠かせない、と思っている私だが、あえて今回チャレンジ。
ワインペアリングはよくあるけれど、ティーペアリングというのは珍しい。皆同じことを考えるのか多くの客が "彩 aya" をオーダーするという。酸味や甘み、旨み、苦み・・・茶という素材にスパイスやハーブ、調味料を合わせたり、ガストロパック(減圧調理器)によって茶そのものの旨みを深く抽出したりしながら、フレンチとのマリアージュを生み出す。ワインを取り混ぜたペアリングも面白そうだ。

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和の学びと遊び心の進化形フレンチ

モダンフレンチの顔をしながらも、ホテルでの長い経験で培ってきたクラシックな技法を生かし、しっかりとしたフォンやジュ、ソースの美味しさを味わわせてくれる。そのくせ重くないのは、ボリュームのセンスと随所に使われるオリーブオイルのおかげだろうか。

「宇治川 秋分」とネーミングされた料理は、オリーブオイルと抹茶のペーストで描いた川の流れに落ち鮎のコンフィやマリネした野菜を盛り付け、オリーブオイルで作ったマヨネーズを添えている。
メインの「京都姫牛/浄化」は、塊のまま焼き上げた和牛を、八坂神社や高台寺、高野山など寺社の松ぼっくりとホワイトセージで燻して香りづけた。良い香りを漂わせながら、ル・クルーゼの鍋ごと客席に持ってきて、その仕上がりを見せるのも恒例となっている。切り分けた肉は、竹炭を練り込んだマッシュポテトの枠に流し込んだソースで食べさせる。高野山ゆかりの御利益ある「三鈷(さんこ)の松」が添えられ、包んで持ち帰らせてくれるのも面白かった。

「MAVO」とは、前身となる小田原の「La Matiere」を「evolution(進化)」させるという思いを込めてつけた店名。オープンしてまだ2年を迎えたばかりだが、シェフもマダムもベテランの域にいる。料理・サービス共に安定感があるが、さらなる進化、変化をこれからも楽しみに通いたい。

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編集後記~シェフのオリーブオイルライフ

渾身の、ということばがぴったりの丁寧な、そして自由で躍動感ある料理!ワンコースといえどもMAVOの料理は日々変わります。オリーブオイルライフの取材、といってお邪魔したら、なんと今回の料理は、どの皿にもすべて(コッソリ?)オリーブオイルを使って作ってみたとのこと。すべて紹介できないのが実に残念です。

今回は特別バージョンだったにしても、もちろん以前からオリーブオイルはよく使っており、すべてエキストラヴァージンタイプ。長年愛用しているオリーブオイルは、フレッシュで、適度な辛みと香りが気に入っているトスカーナ産。アンチエイジング効果があるというこのオイルを、マダムは毎日スプーンに1杯飲んでいるそうです。

最近、加えてギリシャ産も試しているところで、これにローズマリーをつけ込んで低温で香りを引き出したハーブオイルも見せてもらいました。明日公開となるレシピでも、このオイルが使われています。簡単にできるので、家庭でもマネしてみたいですね。

 

【祇園MAVO(京都・祇園)】
住所 ▶ 京都市東山区下河原通上弁天町440舞風館1F
電話 ▶ 075-708-6988
営業時間 ▶ 12:00(入店) 18:30(入店)*完全予約制、1コースのみ
定休日  ▶ 火
HP  ▶ http://cuisinelamatiere.wixsite.com/mavo

 

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