自然豊かな京都・久御山町に生まれ育った谷村真司シェフ。実家の庭で自ら栽培する無農薬ハーブを生かし、京野菜をふんだんに使って旬の食材を絵画のように美しく仕上げたフュージョン料理は、イタリアンやフレンチという枠を越えた「オルト」ならではのもの。特性によって使い分けるオイルや塩も多用せず、軽やかな味わいと食後感が楽しめます。

京都では名の通った人気イタリアンと、野菜使いで知られるフレンチで培った確かな腕に、北イタリアでの経験をプラスして2008年に独立を果たした谷村シェフ。「オルト」は便利な町なかにありながらも路地裏にひっそりとたたずむ、隠れ家風の一軒家レストランだ。以前は白を基調とした明るい1階のテーブル席だけだったが、今春完全リニューアル。2階席は、吹き抜け天井の流木のシャンデリアがアーティスティックな空間を創りだし、1階はL字型のカウンターがシック＆モダンな雰囲気を醸し出している。


店名から「リストランテ」を外して「オルト」とし、インテリアも一新して再オープンしたそのココロは？

「イタリアンという枠にとらわれたくない。食材も技法も含め、もっと自由に料理をしたかったんです」

お酒も色々楽しんで欲しいからこんな壁にしちゃいました、と、まるでバーのようなカウンタ－を背景にシェフは笑う。

目の前のオーブンで焼き上げる熱々のパン

イタリアン、フレンチ、和食を融合したフュージョン料理を標榜するが、オルトの料理はわかりやすく言うと、フレンチや和のエッセンスも取り入れたモダンなイタリアンだ。フュージョンと聞くとどんな料理なのかと身構えてしまいそうだが、心配ご無用。シェフの経験、京都という土地からインスピレーションを得て生み出される美しい皿の数々は、決して奇をてらったものではない。

カウンターの壁に埋め込まれるように据え付けられたコンベクションオーブンは、それ自体が洒落たインテリアとなっている。客が来てから230℃で焼き上げるパンは、ヤケドしそうなアツアツも嬉しい一品。ついお代わりをお願いしたら、今度は違うパンが登場した。

オリーブオイルをたっぷりかけて焼き上げられたパンは、中にまるごとのプチトマトが入っており、果汁が飛び出るといけないからとハンバーガースタイルで食べられるよう、包み紙も添えて供された。コースの中の一品のように存在感のあるパンは、あっという間に胃の中に消えてゆくから困る。

野菜が40種！店の名を冠した極上サラダ

菜園という意味の「オルト」。スペシャリテであり、どのコースにも必ず出されるのが、店名と同じ「菜園」という料理だ。まずはガラスふたを取って40種もの新鮮な野菜やハーブの香りを楽しむ。次にスタッフが、梅で作ったシャーベットを乗せる。仕上げに、グリッシーニと一緒に出された一枝のミントを好みでちぎって入れ、よく混ぜて食べる。

なんと清々しく、わくわくするようなおいしさに満ちた料理なのだろう。季節ごとに野菜も変われば、味も変わる。同じ料理でもその変化を、訪れるごとに味わえるというわけだ。今回オーダーした野菜コースのメインはなす。水なす、緑なす、フルーツなす、賀茂なす・・・4種のなすを楽しむ一皿には、山椒と味噌を使った和を感じさせる一品も。
カラダの中からキレイになれそうな野菜コースは魅力だが、季節ごとの肉魚、たとえば夏なら鮎や鱧も味わいたくてコース選びに悩んでしまう。新生オルトの進化は止まらない・・・そんな勢いを感じたひとときだった。

編集後記～シェフのオリーブオイルライフ！

「オリーブオイルはすべてエキストラヴァージンで、焼きものにはスペイン産を使います。フルーティでコクがある北イタリア、ガルダ湖産が僕のお気にいり。シチリア産は果実が完熟したような甘みがある。料理によってこうした特性で使い分けます。
でもオリーブオイルだけじゃないですよ。実はピーナッツオイルやごま油なんかもスパイス的に使います。イタリアンにこだわっていたら、こういうことはできなかったでしょうね」

オリーブオイルは美味しいし、使うとなんとなく料理が決まる。だから好きだし、ついたっぷり使ってしまう。けれど、シェフのいう「引き算の料理」は、塩分・油分を控えめに使うことで、逆に素材の持つ力や旨みを引き出すというもの。食後感もさわやかで、とても勉強になりました。まずは教えてもらったレシピにチャレンジですね！

【オルト（京都・烏丸三条）】
住所　▶　京都府京都市中京区衣棚通三条下る三条町337-2
電話　▶　075-212-1166
営業時間　▶　12:00～13:30（L.O）
　　　　　　 18:00~20:30（L.O）
定休日　　▶　月（祝日は営業、その他不定休）
HP 　▶　http://orto-kyoto.jp/